HELP
 「そうだよ。たぶん鳩葉ちゃんにとって転換点だったんじゃないかな」と鳩葉の瞳の奥を覗き込むようにぐっと身を乗り出した。「一つの事柄が終わりを告げると、新しい扉が開かれる。躊躇していたことに、すっと挑戦する気になったり、住み慣れた街を離れたり、価値観が変わる。そうやって個人は進化し、その進化の過程で重要な人物に出会うと思うんだ」
「それが、あなた?」
 鳩葉の問いかけに青葉は何もいなかった。今、自分が言ったことをなかったことにするように彼は悠然と、コーラを飲んでいる。炭酸が胃に入り消化する過程で、自ら放った言動をなかったことにしようとでもいうのだろうか。
< 93 / 202 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop