ノスタルジア





「さぁ、どうやってしつけようか」




スッと動いた彼の右手が、また私を目隠しする。





暗くなった視界の中。




「……やっ……!」





最初に感じたのは、耳への違和感。



さらりと澪の髪が頬に触れて、あの日のように耳が熱を帯びる。






「……っ」






荒くなる息と、漏れそうになる声。





あの日の彼は、私の涙を見てその行動を止めたのに。






確かに右手で感じたはずの私の涙の感覚を、彼は無視した。







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