ノスタルジア
「弁当、誰つくるの?」
「んー、あたし」
「どうせおにぎりだろ」
「ふりかけご飯かもよ」
アヤノに父はいない。
シングルマザーで、水商売をやっている母親との2人暮らしで。
夜に仕事をして昼に睡眠をとる母親とは、あまり関わりがないらしく。
昔から弁当を必要とする行事なんかは、いつも自分で適当に丸めたおにぎりを持ってきていた。
高校生になって、自分で弁当くらい作れるだろとも思うが。
彼女じたい、食にはお腹にいれるものという観念以外にあまりないらしく。
おにぎりやご飯だけでも、お腹に入れば何でもいいんだと言っていた。