ノスタルジア
「だけど、もし俺が物語の主人公になれるなら
物語を作る人のことを羨むだろう。
小さな小さな物語の中。
僕はきっと何キロもの重い装備に身を包み
王様の姫を助けるために
命を危険に晒して
大きな怪獣と戦って、火をくぐって
時には仲間を見捨てたり
怪我をおったり
そんなことを乗り越えて
最後はハッピーエンド。
誰かがそんな物語を読んで、
"あぁ、いい話だった"なんて
物語の中の僕はそんなこと望んでいやしないのに。
ただ、ひたすら
小さくて窮屈な物語の中に閉じ込められて
誰かがまたその物語を読むたびに
望まない冒険を繰り返す。
そして、きっと思うだろう。
俺ならこんな物語作らないのに……って」