ノスタルジア
なかなか彼の言いたいことが分からずにぽけっとする私に、申し訳なさそうにそう言って苦笑する澪。
そっとほっぺにあてられた彼の手の甲が、ひんやりと冷たい。
「澪は、むつかしいことを考えてるね」
「難しくなんてないよ。簡単に言えば、ただやり直しのきく物語が羨ましいって、そんな話さ」
「何かやり直したいことがあるの?」
「さぁ……どうだろうね」
彼はまた妖艶に微笑む。
少し酔いの回った淡いピンク色の頬。
トロンとした一重。
コツン、とぶつかったおでことおでこに、彼との距離を知る。
私は知らない。
澪も。
自分も。