ノスタルジア
美容院のお姉さんに案内されて、澪が待っている待合室へと戻ってくる。
「お待たせいたしましたー」
それほど長い時間だったわけではないのだけれど、そこに腕を組んで座っていた彼はいつのまにかうたた寝をしていて。
「お会計、もう済んでますから。ありがとうございました。また来てね、キキちゃん」
気をきかせたのか、おだんご頭のお姉さんはにこりと笑うとそのまま待合室を後にした。
また私はにへらと曖昧に笑って、小さくお辞儀をする。
とても心から笑えるような気分ではないのだ。
何かが、よく分からない何かが、私の胸には突っかかる。
「……澪、起きて」
だけど、私はそれを知らないふりして彼の元へ駆け寄った。