ノスタルジア
彼はずるい。
私がどんなに小さなことで落ち込んでも、こんな風にすぐに私の世界を変えてしまう。
こんな単純なことひとつで喜んでしまう私を、人は馬鹿だというのだろうか。
「ねぇ……澪」
「なに」
さっきのことを思い出して、その小さな箱の中を見つめたまま彼に問う。
「私、澪の思ってるような子になれなくてごめんね」
「……キキ?」
「私、自分ではああいう街中を歩いている子達みたいにオシャレとか、できないから」
ふと、ショーウィンドウの向こうを歩く私と同じような年頃の女の子達を見る。