ノスタルジア




小さく呟いたその言葉を聞いて、彼はわずかに口角を上げた。







「じゃあ、何もいらない。



そのままでいいよ。



俺はちゃんと知ってる



君は"綺麗"だってこと



だから変に着飾らなくていい



……って、恥ずかしいこと言わせんな」






グシャグシャと、いつもより軽くなった髪を撫でられる。




恥ずかしいやら、嬉しいやら。




少し紅くなった頬っぺたを、彼は林檎だと笑いながらつねる。





やっぱり、この人にすぐに言いくるめられてしまう私は馬鹿なのか。







……馬鹿でもいい。馬鹿でいい。






この人だから。







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