ノスタルジア
外には出してくれないくせに、どうして出てはいけないのか教えてくれない。
また私からテレビに視線を戻した彼に、ぷくーっと頬を膨らませた。
────ポーン
と、不意に軽快な音が聞こえる。
私は、無意識に玄関のあるほうへと首を向けた。
その音の主が、誰か知っているから。
「澪、私が出てもいい?」
ワクワクと胸を踊らせて、彼に問う。
だけど。
「ダメ。君が出ると誘拐されるから」
「ちぇ……」
意味の分からない言葉を置いて、彼はパンの最後の一欠片を口に押し込んで立ち上がる。
ここに訪問してくる人なんて、あの人一人しかいないのに。
変なとこ厳重だ。