ノスタルジア
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「キキ」
彼女がそう呼びかけると、そこにいた仔猫は"ニィー"と、か細い声を出した。
「おいでなさいな、キキちゃん」
今度はふざけて、そう言いながら柔らかい笑みを浮かべる。
庭で座っていた黒い仔猫は、差し出された彼女の腕のなかへと駆け寄っていった。
「可愛いやつめ」
「……なんかむかつく」
「あれ、ヤキモチか澪」
いじわるっぽく白い歯を見せた彼女の笑顔があまりにも愛しくて。
照れ隠しにムニッとその頬をつまんだ。
「あ、図星?」
「……そうだけど」