ノスタルジア





カツカツ、と病院には不釣り合いなヒール音を響かせて俺のそばのベンチへ腰かけた彼女。




すらりと長い脚を優美に組んで、その目力のある瞳をこちらへ向けた。







「なかなかイイ男になったわね、あんた。まぁ、小さい頃から綺麗な顔立ちしてたものね」




「…………」





言葉を失う。




仮にも事故にあったのは自分の娘だというのに、最初に俺に言うことはそれか?







じわりじわりと、胸の奥から込み上げるそれを。





俺は平気なふりして押し込めた。











< 239 / 482 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop