ノスタルジア






────────────





『植物状態?』




「そうなる可能性が高いと……」







娘より仕事をとって病室を後にしたアヤノの母親が、俺からの電話に出たのは日がすっかり暮れた夜中のこと。





仕事場の休憩室にでもいるのだろうか……。





キャハハハと電話のの向こうから聞こえる、甲高い女の人や男の人の声が耳障りで。







『……それって、脳死ってこと?』




「いえ、生命維持に必要な脳幹は問題ないので、脳死とは違うらしいんですけど……悪くいけば一生目を覚まさずに、このままの状態って可能性も」




『………一生……ねぇ』







深くため息混じりに、息を吐いた彼女。





さっき彼女といたときに感じたあの気持ち悪い感覚が……また甦ってくる。







< 258 / 482 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop