ノスタルジア
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『植物状態?』
「そうなる可能性が高いと……」
娘より仕事をとって病室を後にしたアヤノの母親が、俺からの電話に出たのは日がすっかり暮れた夜中のこと。
仕事場の休憩室にでもいるのだろうか……。
キャハハハと電話のの向こうから聞こえる、甲高い女の人や男の人の声が耳障りで。
『……それって、脳死ってこと?』
「いえ、生命維持に必要な脳幹は問題ないので、脳死とは違うらしいんですけど……悪くいけば一生目を覚まさずに、このままの状態って可能性も」
『………一生……ねぇ』
深くため息混じりに、息を吐いた彼女。
さっき彼女といたときに感じたあの気持ち悪い感覚が……また甦ってくる。