ノスタルジア
「ねーねー、なんで空はオレンジ色になるんだろうね」
日も落ちてきた夕方。
私と澪は、ベランダの窓辺に座って陽の沈む空を見上げる。
「澪ー」
「…………」
なんとなく意味もないことを隣の彼に話しかけてみるも、応答がなく。
視線を横に向けた。
「……」
だけど、私が話しかけた主はボーッとただ沈む夕日に視線をあずけて。
ゆっくりとされるまばたきに、長いまつげが動く。
朱色に照らされた彼の顔に、私は何も言えなくなった。
「……嫌な色だ」
そう彼がポツリと呟いたのは、すでに陽が落ちた後だった。