ノスタルジア
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なんとなく瞳を開けたとき。
俺が立っていたのは、あの日アヤノが事故に遭ったあの場所だった。
ちょうど時間も同じ頃の夕暮れで。
目の前からずっと続く坂道の先に、沈みそうなオレンジの夕日がゆらゆらと揺れている。
「……?」
だけど、その空間は何か不思議だった。
俺以外の人がいないのはもちろん、音もしない。
蝉の声、遠くの車の音、家から聞こえる誰かの話し声。
何も聞こえず……そこにはまるで無音というBGMがかかっているようだった。