ノスタルジア
ガチャリと、玄関の扉が閉まって。
彼はいつもどおり厳重に鍵をかける。
いくら夏とはいえ、夜中の海に飛び込んだ私たちの身体は凍えるように冷えていた。
「……今お湯張るから、キキお風呂入りなよ」
青白い顔で彼は呟く。
服も髪もまだ濡れたまま、タオルを探しに家の中へと入っていった。
「み、澪は? 寒くないの?」
同じ状況だからこそ分かる。
手の震えは止まらなくて、手足の末端の感覚がなくなって。
そんな中、私が先にお風呂へ入っていいのだろうかと。
彼だって同じように寒いのに。