ノスタルジア
私はううんと首を横に振る。
「じゃあ、なんで?」
「昨日の夜。澪が寝言で言ってたから」
「……そっか」
目を静かに伏せて、彼は何かを考える。
私は黙ってその動作を見ていた。
「君は何も知らなくていいよ」
しばらくして、まぶたを開いた彼は私にそう言う。
だけど、納得ができない。
「私が知っちゃダメなこと?」
「そうじゃない」
「だって、教えてくれないと気になるもん」
「きっとそのうち忘れる」
「澪は……教えたくない?」
「できればね」
「どうして?」