ノスタルジア
「仕方ないよ、お風呂はひとつしかないんだし」
寝室のクローゼットからタオルを持って戻ってきた彼は、そう言って私に向けてふわりとタオルを被せた。
優しく、だけどもどこか乱暴に、わしゃわしゃと濡れた私を拭いていく。
たまにぴとりとくっついた彼の指先は、やっぱり氷のように冷たくて。
「…………」
「……キキ?」
脳内でよぎったのは、いつの日か熱を出して倒れた澪の姿。
もうあんな想いは……したくない。