ノスタルジア
その日の夜。
澪はいつも通り、お酒を片手に庭の椅子に座って涼んでいた。
お風呂上がりで少し元気のない赤毛が、夜風にふわふわと踊らされている。
「……怒ってごめん」
そんな彼を見ながらベランダに腰かけている私に、聞こえるか聞こえないかの声で澪は呟いた。
「ううん……ごめんね、澪」
「分かってる、キキが悪いわけじゃないんだ」
「違うよ、澪。知景はね悪くないの。知景は私をかばって……」
「……それも、分かってる」
「……え」
予想外の言葉に、思わず聞き返した。
澪は表情ひとつ変えずにお酒の入ったグラスに口をつける。