ノスタルジア
あの日、私をかばって澪に怒られた知景。
澪と喧嘩みたいに言い合いしていた知景。
もう、来てくれないだろうと思った。
怒った澪に、ちゃんと本当のことを説明できなかった私に、呆れてしまったのではないだろうか。
もしかしたら、このまま会えなくなるんじゃ……と。
だけど……。
「マグロ買ってきたぞ、キキと澪の」
段ボールの中からガサゴソと刺身の入ったパックを取り出して、彼はニカッと白い歯を見せた。
後ろの澪は、こうやって彼が来てくれることを最初から分かっていたのだろう。
心なしか少し柔らかくなった表情で、「だから言ったろ」と呟いた。
私は、自然に緩くなった頬を押さえながら大きく首を縦に振る。