たいにーがーる*
第一章
「凛子おはよう」
「きゅうちゃんおはよー」
どうも。椎名凛子(しいな りんこ)です。
こいつは私の幼馴染、畑中九作(はたなか きゅうさく)。通称きゅうちゃんです。
いやあ、今日も清々しいね。いい朝。
「凛子。お前、片手に求人誌持ちながら登校するの止めたらどうだ…」
「今月もピンチなのよ。バイト掛け持ちしないと明日の食費がどうなることか」
そう言えばはあ、ときゅうちゃんのため息が流れてくる。
そんな呆れた顔しないでよ。私だっていろいろ大変なんだから。
…くそ。あの馬鹿親父さえいなければ…!
というのも私がド貧乏の理由は実の父にある。
母は既に他界していて。家族は私と父のみ。
その一家の大黒柱である父な訳だが。これが酷い。
家にある財産全部持って、姿を眩ましたのだ。
こんなに可愛い娘一人残して!
「そんな訳で私はマッチ売りの少女のごとく、馬車馬のごとく、毎日働いてるわけよ。きゅうちゃんおわかり?」
「凛子が苦労してるのは分かるけどさ、」
「同情するならバイト先紹介してよ」
"ベチッ"
痛っ!え、何で私叩かれたの!?
私から求人誌を奪ってそそくさと歩いていくきゅうちゃん。
「きゅ、きゅうちゃん!何で私は叩かれたの!?」
訳のわからない私は慌ててきゅうちゃんの裾を掴んで付いていく。
きゅうちゃん脚長いよ!歩幅がっ…
「うるさい。自分で考えろ」
「えぇー…」
「(人が心配してやってんのに…凛子のやつ!)」