不機嫌honey
【シュリ】



お父さんが亡くなったのは、3ヶ月前。



病気が見つかり、すぐに天国へ行ってしまった。



友達の借金の保証人になったとかで、うちは借金まみれのビンボー一家。



テレビはないし、服もあんまり持ってない。



唯一高校だけは行かせてくれた。



がんばって働いていたお父さんが急にいなくなり、現実を受け止められずに…。



『うちは男の子がいるから、引き取るなら女の子のシュリがいいわ』

『俺がユウリを引き取るのか!?俺もシュリだけでいい。うちには年頃の娘がいるんだ』



親戚の会話をユウリと聞いた。



引き離される。



その絶望感に包まれ、声が出なくなった。



『僕はひとりでも平気だよ。シュリは好きなとこにいけばいいよ』



笑ってそう言ったユウリと絶対離れたくなかった。



あたしの理解者はユウリだけだったから。



同じ悲しみを背負っているのは、ユウリだけ。



声が出なくて、必死で泣きながら首を横に振った。



< 11 / 465 >

この作品をシェア

pagetop