不機嫌honey
少し離れた場所で、近くの岩に座る。



お父さんが好きだった洋楽のひとつ。



とにかく大きな声で歌った。



澪王に近づきたい。



澪王の隣にいても認められるようになりたい。



レイさんの態度や言葉が、なぜか悔しくて。



無性に泣きそうになった。



「シュリ」

「あっ、ユウリ!!」

「久しぶりに聞いた。やっぱりうまいね」

「自分でも思う」

「なんかあった?」

「どうして?」

「シュリが大声出してるから」

「うん、うん…。あたし、このままじゃダメな気がするの。もっと大人になって、もっとすごいって言われる人間になりたい…」



ポンポンと頭に乗ったユウリの手。



あたしの言葉を待ってたかのような、そんな表情。



ユウリは…やっぱりマジメだ。



全部わかってて、全部先を行く。



「僕は男だからね。いろいろやるよ?今の仕事、本当に楽しいんだ」

「ユウリ…」

「やりたいこと、やればいいよ。シュリは歌手にでもなる?」

「ヤダ。澪王と同じ土俵なんて、絶対イヤ。違うとこで戦う」



誰かに認められたいと、初めて思った。



< 239 / 465 >

この作品をシェア

pagetop