不機嫌honey
グチグチ文句を言う俺の話を、ずっと聞いていた小林は、最後にこう言った。



「要するに、澪王さんはビビってんスね。レイくんなんかに負けるんですか?俺はそんなダサい澪王さん、見たくないスからね。おやすみなさい」



俺が負ける?



そんなのあり得ねぇ。



いくらマネージャーで常にそばにいたとしたって、俺は負けたくねぇ。



眠りに落ちた小林にも布団をかけて、俺ひとり、スタジオに降りる。



眠らなきゃいけない時間なのに、頭の中に流れたメロディ。



それを忘れないように記録しときたくて。



気がつけばサラリーマンの出勤時間。



「マジかよ…」



最近の俺、頭の中がどうにかなってる気がする。



次々に浮かぶ音楽に、歌いたい衝動。



何かある度、音に逃げてるような、そんな気がする…。



「すっげー…」

「起きたのか、駿太郎…」

「なんか切ない曲。歌詞付けていい?それ聞いたら浮かんできたから。ちょっとアコギ弾いてよ」

「泣けるヤツ頼むな」



そのまま、仕事の時間まで曲を作った。



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