キャンディ☆キス
あ〜っ、もう!
絶対バレた、バレた、バレた!
恥ずかしさで一樹の顔を見ることもできなくて
鞄と靴を手に取り、扉の方に向かって先に出て行こうとする。
ドキドキ、ドキドキ。
高鳴る鼓動はまだおさまらない。
「……亜希っ」
後ろから腕をつかまれると、さらに息が止まりそうになった。
「もうっ!早く着替えたら?こっちまで遅刻するじゃんっ」
もうどうしたらいいかも分からなくて、振り向かないまま言葉を返す。
誤魔化しきれないなら
とにかくこの場を離れないとどうしようもない!
手を離せ、逃がせっ!
そう焦っていると……
やがて握られていた腕の感触は、わずかに緩まった。
……一樹?
ゆっくり振り返れば、そこにはすごく冷めきった一樹の表情があって。
「亜希……お前が男だって意識しなくてもやっぱりオレ男だからさ。
……もう部屋には来んな」
え……。
一樹の言葉が、私の胸にドクンと突き刺さった。
ちょ…ちょっと待ってよ。なんでそうなるの……?
さっきまで力が込められていた自分の腕に、いつの間にか震えが起こっていることを微かに感じる。
なんで……そんな顔するの?