キャンディ☆キス
眩しい光が入り込む朝が来ても、私は部屋の窓を開けることができなかった。
開ければ一樹の部屋が見えるし、もしも顔を合わせたら何を言っていいかも分からない。
おはようって、言っていいのかさえも自信がない。
一樹はちゃんと遅刻しないで起きただろうか。
学校に着くと、私はすぐに一樹の下足箱を確認した。
よかった、ちゃんと来てる。
今さら一樹の遅刻の心配なんてする必要もないんだけど、やっぱりなんとなく気になった。
「亜希〜、おはよーっ。あれ?今日も一緒に来なかったんだ、一樹くん。あんたらケンカでもした?」
「んー……そんなこともないけど」
中途半端な苦笑いに、由美も不思議そうな顔をしていた。
ケンカとは、仲直りできるものを言うんじゃないかと思う。
私と一樹は、ずっとこのままになったりしないのかな。
その日の帰り道。
私の目の前には、ちょうど先日告白してきたばかりのあの子と帰る一樹の後ろ姿があった。
すごくゆっくりなペースで歩いている二人。
追い越したいけど、そんなこともできない弱い私。
あんたらの後ろ姿なんて長時間見てたくないっての!
私は途中の角で、家とは逆の方へ曲がった。
あの後の二人の様子が気にならないわけじゃないけど、いやむしろ最後まで見てたいけど!
見てれば自分が落ち込むだけだから、私はそこからすぐの所にある駄菓子屋さんへ向かったのだ。
一樹とよく行った、三角イチゴが置いてあるお店だ。