キャンディ☆キス
高校生になってからはオレの朝練が早くて、二人で登校できることも少なくなってたけど
たまに帰りが一緒になれば、自販機の前でジャンケンなんかしてジュースを賭けたり
ふざけて言い合いとかしながらも、二人乗りの自転車で坂道を大笑いしながら突っ走ったり。
亜希と向かい合って呼吸してると、なんだかいつも夏祭りの朝みたいな気分なんだ。
ワクワクして、ドキドキして。
屋台で買ったソーダラムネを、飲み干すのがもったいないと感じてしまうように
1日が終わっていくことが、すごく惜しいと思ってしまう。
明日また会えるとわかっていても、なかなか取れないビー玉みたいにもどかしくて。
こんなに近くにいるのに
手に入らない。
軽快なチョークの音も、さすがに今日は眠気を誘わないようで。
亜希がこっちを見てる気がして顔を上げてみたけど、そんなこともなかったみたいだ。
「ねぇ、一樹くん。これあげる」
「……何これ」
「ハートっ!可愛いでしょ?」
隣の彼女がノートの切れ端でハートの形を折っていた。
女の子って
こんなのが可愛いのか。
「ちょっとその折り方教えて」
「えっ!一樹くんが折るの?」
「うん」
亜希も可愛いとか思うのかな。
「それって私にくれるのぉ?」
「いや、お前じゃない」
オレは三角イチゴをひとつ口に入れて、その包み紙を机の上に広げた。