キャンディ☆キス

高校生になってからはオレの朝練が早くて、二人で登校できることも少なくなってたけど

たまに帰りが一緒になれば、自販機の前でジャンケンなんかしてジュースを賭けたり

ふざけて言い合いとかしながらも、二人乗りの自転車で坂道を大笑いしながら突っ走ったり。



亜希と向かい合って呼吸してると、なんだかいつも夏祭りの朝みたいな気分なんだ。

ワクワクして、ドキドキして。

屋台で買ったソーダラムネを、飲み干すのがもったいないと感じてしまうように

1日が終わっていくことが、すごく惜しいと思ってしまう。



明日また会えるとわかっていても、なかなか取れないビー玉みたいにもどかしくて。

こんなに近くにいるのに
手に入らない。






軽快なチョークの音も、さすがに今日は眠気を誘わないようで。

亜希がこっちを見てる気がして顔を上げてみたけど、そんなこともなかったみたいだ。



「ねぇ、一樹くん。これあげる」


「……何これ」


「ハートっ!可愛いでしょ?」



隣の彼女がノートの切れ端でハートの形を折っていた。

女の子って
こんなのが可愛いのか。



「ちょっとその折り方教えて」


「えっ!一樹くんが折るの?」


「うん」



亜希も可愛いとか思うのかな。



「それって私にくれるのぉ?」


「いや、お前じゃない」



オレは三角イチゴをひとつ口に入れて、その包み紙を机の上に広げた。



< 19 / 25 >

この作品をシェア

pagetop