キャンディ☆キス

しぶしぶ起き上がった一樹は、机の上の瓶に入っているイチゴ飴をひとつ口に放り込み、洗面所へと階段を下りて行った。

その間、私はベッドの上に座り一樹の準備が出来上がるのを待つ。

きょろきょろと辺りを物色したけど、とくに昔と変わった様子はない。



「へぇ~、相変わらず好きなんだ。
……三角イチゴ」







一樹の家と私の家は隣同士。

小学生の頃から、お互いの家にはよく行き来していた。



「あら、亜希ちゃん。
起こしに来てくれてたのね〜。二人ともいってらっしゃい」



玄関先で見送ってくれたのは一樹のお母さん。

外履きを手に二階から下りてくる私を見ても、今さら驚くことはない。

逆にいつもありがとうとお礼を言われるくらいだ。



「おばちゃん、行ってきまぁ〜す」






学校までの1kmほどを、二人で並んで歩いていく。

高校に入ってからは一樹が部活の朝練に参加するようになったから

こうして一緒に通うのはなんだか久しぶりだった。



「お前いいかげん窓から来んのやめたら?一応オレ男なんだし。平気に入って来るもんじゃねぇぞ」



呆れ顔で一樹が私を見下ろす。



「じゃあ自分で起きるようにすればいいじゃん。どっちにしても一樹を男だなんて意識してないけどね〜」



私は対抗するような目で
一樹を見上げた。

すると一樹は、なんだとぉ〜!って感じの顔で口を尖らせて…



……ん?

一樹また背が伸びたんじゃない?



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