キャンディ☆キス

一樹の茶色い前髪が、私のボサボサの前髪と微かに重なる。

すぐ近くにある一樹の顔は、緊張してとても直視できない。



「亜希さ、こんなんで壊れそうになるんだったら、オレがキスしたら気絶するんじゃねーの?」


「……え、ええっ!?」





それからの沈黙はとても長く感じた。二人の間に流れるドキドキの波だけが、何度も繰り返されて。


少しずつ近付く一樹との距離に、何か話さないと本当に壊れそうだったから……



「で、でも……今日の一樹のキスは甘過ぎるんじゃないの?」


「亜希のレモン味と混ざったら、たぶん丁度いいんじゃないかな」



まぁ、どうでもいいか……






何度も重なる柔らかな感触と、

夏の風に包まれた、甘くてすっぱいとろけるようなキスの味。



列に並べなかったあの時から、ずっと待ってた。



誰も知らない
私だけの一樹のキス……

これからきっと、いつでも味わえるんだよね、一樹。









「なぁ、亜希。お前のために言うけど……そろそろ着替えたら?」


「えっ!うわっ、そうだった!」



私は慌てて自分の姿をもう一度確認した。

着替えた覚えはないので、当然まだパジャマのままだ。



「いや、オレは別にいいんだけど。やっぱりベッドの上にいるし、ボタンの隙間から下着見えてるし……なんていうかその、マズイかなっていうか……えっ? ぶふぁっ!!」


「見るなバカズキっ!」




< 24 / 25 >

この作品をシェア

pagetop