キャンディ☆キス
一樹は小さい頃から女の子に人気があって。
幼稚園の頃にはすでに一夫多妻制を夢見る変な子供だった。
「オレ、女の子はみんな好きだよ」
ニコッと笑うと、その表情は誰が見ても可愛くてかっこ良くて。
一樹くんと結婚したい!
そう切望する女の子も多かった。
「う〜ん、オレ誰か一人なんて選べないからみんなと結婚する!」
正義の味方のようなポーズをとりながら、バカみたいな宣言をしていた子供一樹。
それがまた、女の子から見れば最高に素敵で。
「ねぇねぇ亜希ちゃん。一樹くんがみんなにキスしてくれるんだって!
一緒に並ぼう」
女の子が列を作って一樹が順番にキスをしていくという、今考えたらかなりアホ臭い遊びをあの頃は平気にやっていたりしたのだ。
「一樹く〜ん、次私の番だよぉ」
でも、私はその列に並ぶことなんてできなくて。
「亜希ちゃん、一樹くんのキスってイチゴの甘い味がするんだよ」
「ふ〜ん……」
そんな女の子たちの様子を、全然気にしていなかったわけじゃない。
むしろみんなに紛れてその列に並びたいとも思っていた。
だけど
「私は行かない」
恥ずかしがりやの私は、ずっと一樹のことが好きだったのに
ドキドキバクバク、小さい体が壊れてしまいそうなくらい緊張して。
みんなみたいに、笑って列に並ぶことなんてできなかったのだ。