ひまわりの涙
扉の先に10人は優に座れるだろう大きさの革張りのソファーとテーブル。

そこには兄はおらず、窓際に立って外を眺めていた。

廊下と違い、この部屋からは竹林の中に居るかのような風景が窓から見える。

何部屋か応接間があるが、ここが一番好きだった。

「ここはお前が好きな場所だったな」

そう言いながら振り返る。

短く揃えられた髪に、長身。

大きくはないが二重の目。

知らない人が見れば優しい人だと思うだろう。

いや、実際優しいのかもしれない。

幼い頃は優しかった…

今目の前にいる兄はそんな雰囲気は微塵もなく、ビジネスであるかのような厳しい顔つきをしていた。

「座ったらどうだ」

そう言いながら春仁は腰を下ろしたため、私も目の前に座ることにした。

顔を上げられず俯いているが、春仁の視線を感じいたたまれない。

何か話すべきだよね…

分かっているけど言葉がでず、運ばれてきたコーヒーの香りで落ち着こうと小さく深呼吸した。

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