ひまわりの涙
兄の顔を驚きとともに見つめていると、春仁は話し出した。

「髪切ったんだな…まあ、いい、カツラもあるしな………て………らう」

名前を呼ばれた驚きで話の内容がうまく理解できなかった。

だけど今……どういうこと?

時間が止まってしまったかのように、自分の感覚が働かない。 

「聞こえなかったか?相変わらずボーッとしてるんだな」

そう言って苦笑いをした。

「もう一度言う。この結婚を気にお前、鞠乃に仕事を手伝ってもらう」

「なっ、なぜ?!」

震えが止まらない。なぜ今更私に手伝えと…

私に出来ることはない。

ましてや結婚を気にっていったい…

それからの春仁の話はほとんど上の空だった。

なのに話の内容は頭の中にあった。

婚約者の実家である芸能プロダクションを吸収する。

大手とはいえ、不景気で芸能界も厳しくなってきていること。

大女優やミュージシャンを抱えてはいるが、社長が手を出した事業が失敗し多額の借金を背負ってしまったこと。

その借金を肩代わりする代わりに会社を吸収、令嬢をもらうと言うことだった。
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