ひまわりの涙
笑いながら”おじゃまします”と司は入ってきた。

私はどうしたものかとソワソワしていたが、愛用のコーヒーメーカーが目に入りスイッチを入れた。

幸いなことに直ぐに使えるようにセットされていた。

きっと鯉淵さんだろう。

振り返り司を探すとテラスにでて外を眺めている。

その姿はどこかの王子様のように洗練され美しい。本人に言ったら笑い飛ばされそうだけど。

ソッと近づき隣にならんで外を眺めた。

そこにあるのは一面芝生の真ん中に大きな木が一本立っている。

何の木か忘れたけど、昔から大きかった。

司は静かな、ホッとするような声で呟いた。

「ここは都会の真ん中とは思えないなぁ」

横を見上げると微笑みを浮かべて私へと視線を下ろすところだった。

「君は本当にお姫様だ…」

司の手が私の頬を包む。

「なっ、何を言っているの?私は…お姫様なんかじゃ…ない…」

このシチュエーションに恥ずかしさがまし、尻つぼみのように声が小さくなっていく。

そんな私を優しい目で見つめている。

「つ、つかさ、さん」

不安になり司を見上げる。

「君を、食べてしまいたくなる。いや、大事に誰にも触れられないように俺の懐にしまっておきたくなると言った方が正解か」

真顔で言う司に私は目を丸くすることしかできない。
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