ひまわりの涙
春仁は部屋へ入るなりデスクの前に座り仕事を始めた。

部屋の中は必要最低限の物しかなく、広い部屋が益々広く感じる。

司はそんな春仁に遠慮もせずしゃべり出した。

「鞠乃の所にいったのか?さっき聞いたが明日かららしいな」

デスクの前にゆったりとソファー座っている司は厳しい顔付きで春仁をみつめた。

春仁は書類の山から顔もあげない。

「もうこれ以上時間をかけるわけにはいかないからな」

眉一つ動かさず仕事に没頭している。

「そうか…その事については俺がとやかく言える立場じゃないが、一人の医師として言わせてもらいたい。鞠乃の体調があまり良くないように見える。今日検査に来るよう伝えたが来なかった。一度検査した方がいいと思うんだ」

最後の方は弱々しく聞こえるくらいの声になっていた。

そんな司の態度に春仁は反応を示した。

司の前に座り

「いったいどこが悪いと言うんだ。俺にはそんな変化は見えないが…」

「ハッキリしたことは検査してからじゃないと分からない。何でもないかもしれないしな」

そう言うが司の顔は冴えないでいた。

「そうか。なら近々時間をとって行かせよう」

春仁はそう言うとまた仕事に戻っていった。

司もこれ以上いても意味がないと思い挨拶もそこそこに部屋を後にした。
< 54 / 82 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop