ひまわりの涙
セット前に立つと色々な機材が全て私にむけられた。


今まで行き交っていたスタッフも一斉に私をみる。


さっきまでの意気込みも萎えそうだったけど、優子さんの言葉を信じて深呼吸をした。


「鞠乃ちゃん、準備はいい?僕はカメラマンの関口。リラックスして僕の言ったように動いてくれればいいからね」


そう言って笑う顔は誰もか警戒を解いてしまいそうな柔らかな優しい笑顔。


「はい」


小さいけどハッキリした返事ができた。


「じゃ、そこのセットの斜め横に立って」


言われるままに立ち、言われるままに動いた。


それしか私には出来ないし、相手はプロなんだからと身を委ねてみた。



「いいねー、鞠乃ちゃん!そう、その表情!」


表情を誉められても自分が今どんな顔をしてるのかも分からない。ただ分かるのは笑えと言われないこと。それだけはホッと出来る。


どれくらい時間が経ったのか、言われるままに動いていたけどそろそろ体力も限界だった。


なんだか頭がボーッとしてきた。


ダメ!後少し頑張らないと…


そうも思いながら踏ん張っていると関口さんの声が響いた。


「OKです!!最高なものがとれた!鞠乃ちゃん!お疲れさま!」


あー、おわったぁ。


そう思ったのと足の力が抜けていくのが同時で、そのばに座り込んでしまった。
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