ひまわりの涙
道中はいつの間にか寝てしまったみたいであっという間にホテルに着いた。


ロビーには所狭しと着飾った紳士淑女達がいた。

その合間をぬって最上階の部屋へと案内してくれ、ここで待機するようにと伝えられる。


でも今から何が始まるのかは誰も教えてくれない。


気にはなるものの今までだってズット引かれたレールの上を歩いてきただけ。聞いたところで何かが変わるわけでも逃げられるわけでもない。


「おとなしく待ってろって事ね…」


誰に話すわけでもなく独り言をつぶやいた。


「そうだ、飲み込みが早くて結構なことだ」


後ろから突然聞こえてきた声に驚き、ソファーから落ちて尻餅をついてしまった。


「いったぁ…」


「いったい何してるんだ。ここで怪我されても困る」


ため息と共に手を貸してくれソファーに戻された。


「お兄様、どうして?」


少し痛む足首をさすりながら向かいに座った兄に聞いた。


「誰がここに一人といった?俺がいてもおかしくはないだろう」


そう言って苦笑いをした。


「ご、ごめんなさい。勝手に一人だと思いこんでしまって…」


「まあいい。それよりこれからの事をききたいだろう?」


これからの事。自分で選べないにしても自分に降りかかることぐらいは知りたい。


「はい。私にこれから何が起きるかぐらいは知りたいです。何も選べないにしても…」


最後の一言は精一杯の嫌み。お兄さまに、そして自分自身の弱さに…
< 68 / 82 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop