ひまわりの涙
ー3ー
自宅からそう遠くない場所に居たはずなのに、彼と会ってからは家までの距離が、道が延びていくんじゃないかと思うくらいに長く感じられた。

気がつけば息は上がり、アパートの前まできていた。

二階建ての六戸。

階段を上って直ぐの角の部屋が私の家。

玄関を入れば直ぐにキッチンの六畳二間。

一人暮らしには丁度いい広さだった。

余計な物はなく白を基調にした家具。

水を一杯飲むとソファーに倒れ込むように座った。

「初めてみた、あの人…」

さっき会った鏡明人の事を思い出していた。

あれから二年も経っているんだから私の知らない人が入っててもおかしくはない。

けど慎重な兄が簡単に側近を変えるとは思えないし、ましてや私との橋渡しに使う相手ぐらい
選んでるはず。

あの時の冷たい雰囲気を思いだし怖さがよみがえってきた。

テーブルに目をやるとさっき渡された手紙が目に入る。

「どうしよう…」

あの人は今を守りたいなら読むなといった。

けど、今頃こうして連絡を取ってくるぐらいだから何か大切なことかも知れない。

朝ニュースでも話題になってたことを思い出した。

そっと封筒を手に取るも開封する勇気がない。

薄っぺらい封筒。

おそらく一言書いてあるだけ。

また手が震えてくる。

「きっと、朝のニュースに関係あるよね…」

家は出ても、私もまだ神城家の人間って事だろうか…

意を決して封を開けることにした。
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