ひまわりの涙
そんな私を司は優しく抱きしめてくれた。


「ウウウッ…」


何にも言わず抱きしめてくれる司にありがたさを感じた。今は何にも話したくなくて、ただ心の膿をだしたかったから。


司は腕の中で震えながら泣いてる女性を奪い去りたい衝動と戦っていた。


なんで鞠乃だけがこんな目に合わなきゃならないのか、どうして笑って普通に暮らせないのか、自分がその笑顔を守ってやれない腹立たしさが押し寄せてくる。


可愛い鞠乃、大切な鞠乃、愛しい鞠乃…


「鞠乃…?」


囁く声は掠れていてまるで司まで泣いている様だった。


いや、実際司は涙を堪えていた。


「氷をもってくるよ。足、冷やさないともっと腫れてしまうから…」


腕の中の鞠乃をソッと離すと落ち着いたのかヒャックリをしながら頷く。


「お姫様、あとお水もお持ちしましょうね」


無理におどけたように司は言った。


鞠乃は微かに笑みを浮かべた。


良かった…司は安堵のため息を漏らしながら氷を取りに歩き出した。
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