ひまわりの涙
それと同時にチャイムがきこえ鏡が迎えに現れる。


「鞠乃様、お時間です」


一瞬心臓が跳ね上がった気がしたが深呼吸をして鏡に返事を返した。


「わかりました。今行きます」


隣の司も立ち上がり


「エスコートをしましょう。鞠乃お嬢様」


イタズラっ子の様におどけて見せた司だったけど、その顔は心配で堪らない表情をしていた。


「司さん、私は平気よ。そんな顔しないで」


笑って見せたが私の顔もひきつっている事ぐらいは分かっていた。


「鞠乃ちゃん、大丈夫。さっきも言ったけど味方は沢山いるわ」


味方…色んな意味があるけど、今はこの言葉に救われる。


「ありがとう、優子さん……いってきます」


一言優子に言葉を返し、差し出されている司の腕をとって歩き出した。


幸いに捻った足は痛まなかった。


「ねえ、司さん?優子さんも大学時代の同級生?」


そういって見上げた司の顔は何か思い出したのか楽しそう。


「悪友かな。今度ユックリ教えてあげる」


ウィンクした司に顔を赤らめてしまったが、本当に素敵だった。


司さん…このドキドキはなんだろう…


緊張してるのかなぁ…


ユックリと私の歩幅に合わせて歩く司の横顔を見て私は少しでも見劣りしないようにと胸を張った。
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