最後に、恋人。
「・・・・部屋、あがるよ」
しぶしぶ由紀をベッドまで運ぶ。
相当しんどいのだろう、由紀は目さえ開けられない。
「・・・・人間って、なかなか死なないモンだね。 ・・・・割としんどいんだけどなー」
由紀は少し笑いながら呟いた。
「・・・・・生きようよ。 手術・・・・しようよ」
もう彼女ではない。 友達でもない。 由紀を幸せにする事も、由紀の夢を叶えてやる事も、由紀の未来を保障してやる事も出来ない。
そんなオレがこんな事を言うのは、やっぱり無責任だろうか。
「・・・・・他人の幸せって眩しいよね。 眩しすぎて、羨ましすぎて、目潰れそうなの。 孝之には絶対分かんないよ」
「現れるかもしれないじゃん。 由紀を幸せにしてくれる人」
「現れないかもしれないじゃん??」
由紀に気休めなど通用しない。
『次がある』なんて前向きになれる程、オレたちは若くなかった。