最後に、恋人。
「・・・・孝之、シゴト中なんじゃないの?? 戻って」
手術を薦められるのが嫌なのだろう。
由紀がオレを帰らそうとした。
「・・・・由紀、鍵・・・・変えてないだろ。 あん時の合鍵・・・・ないの??」
「・・・・・なんで??」
「・・・・今日みたいなの、嫌だから。 由紀と連絡とれなくなったら勝手に由紀の部屋にあがる」
せめて、一人ぼっちで死なせる事だけはしたくない。
「・・・・・ない」
由紀とは4年付き合っていた。
由紀の嘘など、すぐ分かる。
「・・・・・どこ?? 言わないなら勝手に探すよ。 どうせ動けないんだろ??由紀」
「・・・・・なんで」
「・・・・・看取らせて。 オレに、看取らせて」
2度も由紀を見捨てるなんて出来ない。
せめて最後に、由紀の助けになりたい。
「・・・・小物入れの中」
由紀に言われた通り、小物入れを開ける。
鍵には、オレが使ってた時に付けた飾りが、そのまま付いていた。
「・・・・あった。 持ってくぞ」
「・・・・・・」
由紀は返事をしなかったけど、オレはその鍵をポケットに入れて由紀の部屋を出た。
『由紀を看取る』
気持ちに嘘はない。
でも、オレにその覚悟はあるのだろうか。