最後に、恋人。
夢の国で夢を見る。
鍵を手にした日から、毎日のように由紀の部屋に行く。
毎日、ただたわいも無い話をして帰るだけ。
「明日と来週の月曜日と火曜日は来なくていいよ。 ワタシ、いないから」
最近の由紀は体調が良さそうだった。
食欲もあるようで、由紀はオレが買ってきたお菓子を喜んで食べていた。
「どっか行くの??」
「うん」
「ドコ??」
「ディズニーランドと、温泉」
由紀は遠足前日の子供の様にウキウキしている様に見えた。
「誰と??」
「1人だよ。 すぐ疲れちゃうワタシと行っても一緒にいる人が楽しめないじゃん。 ワタシもワタシのペースで動きたいし」
温泉はまだしも、あの夢の国に1人で行く気なの??
由紀、本気??
「・・・・・明日、有給取るわ。 オレも行く」
そんな可哀想すぎる由紀、痛々しすぎる。
「痛い人見る目で見ないでくれるかな。 ワタシはただ、気を使いたくないから1人で行くって言ってるだけじゃん」
「由紀がそう思ってても、周りはそうは思わないだろ」
「・・・・・奥さん、いいの??」
「は?? オレら、やましい事何もしてないじゃん」
「・・・・そっか。 介護してるだけだもんね」
由紀が苦々しく笑った。
そんなつもりではないが、じゃあどんなつもりかと聞かれれば分からない。
「明日、オレが迎えに来るまで家出んなよ」
否定の仕方が分からないから、命令口調で話を終わらせた。
由紀とディズニーランドに行くのは、何年ぶりだろう。