最後に、恋人。
久々に来たディズニーランドは、相変わらず夢の国だった。
夢の国の力は凄かった。
夢の国に着くなり、由紀のテンションは急上昇。
病気だという事を忘れる程に、由紀は元気に動き回り、アトラクションに乗りまくっていた。
こっちが由紀に着いてくのが疲れるくらいだった。
「由紀、ちょっと休憩。 のど渇いた」
先を歩く由紀の腕を掴んで止める。
「そーだねー。 ワタシも休憩したい」
2人で比較的空いていたカフェに入った。
由紀を席に座らせ、ドリンクを注文しに行く。
フと由紀の方に目をやると、由紀は窓の外をキョロキョロ見回していた。
「由ー紀。 何?? 何か探してんの??」
貰ってきたコーラを由紀に手渡すと、由紀は『ありがとう』と言って一口含んだ。
ストローをいじくっては、また外を見渡す由紀。
「孝之ってさ、ミッキーに会った事ある??」
由紀は、ミッキーを探しているらしい。
「・・・・ないかも」
「ワタシもないんだよ」
由紀をミッキーに会わせてあげたくなった。
テーブルの下で携帯をいじる。
誰かつぶやいてろ!!
『シンデレラ城付近でミッキー発見』
誰だか分かんないけど、ナイスツイート。
「由紀、コレ飲んだらシンデレ・・・「さすがに疲れたなー。 パレードまでもつかな、ワタシ」
オレが疲れているくらいだ。 由紀が疲れないハズがない。
マップを確認すると、シンデレラ城はココから結構遠かった。
でも、ミッキーに会ったらまた由紀が元気になってくれるんじゃないか??という訳の分からない期待をしてしまったオレは、どうしても由紀をミッキーに会わせたくなった。
ココは夢の国。
イイ歳の大人が頭にミッキーの耳をのっけて大はしゃぎする夢の国。
何でもアリな気がした。
「由紀、飲み終わった??」
「え?? うん」
「出るぞ」
「もうちょっと休みたい」
由紀には動く体力がもう残っていないらしい。
想定内。
「由紀は歩かなくていいから!!」
由紀の腕を引っ張って強引にカフェを出る。
「由紀、乗って」
由紀の前で膝を地面につけてかがむ。
由紀をおぶってシンデレラ城まで走ろう。
着くまで待ってて、ミッキー!!
「やだ」
オレの盛り上がるテンションを、由紀は一言で拒否した。