最後に、恋人。
みんなカメラを構えてパレードを見ている中、やっぱり由紀はただキラキラの世界を眺めるだけだった。
「・・・・今日、ありがとうね。 すっごい楽しかった。 ミッキーにも会わせてくれてありがとう」
由紀は寒そうに身体を擦りながらオレに笑いかけた。
「由紀、寒い?? 帰る??」
「大丈夫。 最後まで見る」
パレード、あと何分ぐらいあるんだろう。
今日は肌寒い。
病気の由紀が風邪でもひいたらどうしよう。
上着を脱いで由紀の肩にかけた。
「いいよ、孝之が風邪ひいちゃう」
上着を剥ぎ取ろうとした由紀を後ろから包み込んだ。
「由紀、寒くない?? 大丈夫??」
由紀は一瞬逃れようとしたけれど、オレが腕の力を強めると、おとなしくオレに収まった。
腕の中の由紀から、懐かしい匂いがして
涙が出そうになった。
好きだった、大好きだった匂い。
由紀の匂い。
由紀、やっぱり死なないで。