初恋
私が泣き止むと、私たちは再び歩き出した。
今度は手を繋いで。
少しの照れ臭さはお互い感じていたが、気まずさは消えていた。

「どこに向かってるの?」

店を出てから結構な距離を歩いていたので、東吾に聞いてみた。
すると東吾は楽しそうに言った。

「そうやな。沙羅、当ててみ?」
「なにそれ。なぞなぞ?」
「それを言うならクイズやろ」
「どっちも問題出すことには変わりないじゃん」
「沙羅は相変わらずやなぁ」

嬉しそうに笑いながら東吾がわたしを見た。
私も東吾とこうして笑いながら、手を繋いで歩いていることが嬉しくて仕方なかった。
だけど、私の性格が素直にそれを表現する事は許さず、つい憎まれ口を叩いてしまう。

「成長してなくて悪かったわね。で?どこへ行くの?」
「そうやな・・・ヒント!ふたりの思い出の場所」
「思い出の場所?・・・・う~ん・・・海とか?」
「もうあそこはええわ。沙羅にまた泣かれそうやし」
「もう泣かないわよ!じゃあ・・・遊園地?」
「今から行くにはちょっと遅いやろ。また今度行こな」
「うん!」

 『また今度』

東吾の言葉が嬉しかった。
『また』があるんだ。
これで終わりじゃないんだと思うと嬉しかった。


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