初恋
ふたりで出店を見て回り、少しはしゃいだ時間を過ごした。
そして、人の流れに流されるがまま、花火が打ち上げられるポイントへと向かっていった。

しかし、さすがにほとんどの人がそこへ集まってきて、まともに歩くにも苦労する程に混み合ってきた。

「あ、すいません」

普段履きなれない下駄で人混みを歩くとフラついてしまい、もう何度もこうして人にぶつかっては謝るを繰り返していた。

「沙羅ちゃん、もしかして足痛い?」

隣を歩いていた田宮が心配そうに私を見た。

「痛くはないんだけど、さすがに歩き辛くって・・・」

田宮に気を使わせてしまった事が嫌で言葉を濁しながら答えた。
すると田宮は私の前にすっと左手を差し出した。

「手、引いたらちょっとは歩きやすいやろ?」
「あ・・・えっと・・・」

躊躇う私に田宮はにやっと笑いながら言った。

「初めて手繋ぐわけちゃうんやし。ほら」

そう言って田宮は私の右手を持って歩き出した。
ぐっと手を引いて、それでも私の歩幅に合わせてゆっくりと田宮は歩いてくれた。
私は嬉しいのと恥ずかしいのとで、顔を上げることができず、俯いたまま田宮の少し後ろを歩いた。
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