初恋
約束
約束

それから東吾からの連絡は来なかった。

連絡が無いって事は向こうで元気にやってるって事なのか。
それとも、もう私の事など忘れてしまったのか。
それを確かめる事も出来ず、ただ私も部活に勉強にと高校生活を送っていた。

肌を焦がす季節が過ぎ、テニス部は3年生が引退し、新体制となった。
初々しい2年生部長に貫禄が出始めた頃には、季節はすっかり冬へと突入していた。

クリスマス当日の今日も、休み無く部活はあって。
世の中はクリスマスムード一色になって浮かれていたが、私はどこか冷めた眼で煌びやかなイルミネーションを見ていた。

「みんなさぁ、こんなに綺麗に飾ってるけど明日になったらさっさと取っ払って、すぐにしめ縄とか飾っちゃうんでしょ?なんだか日本人って切り替えが早いよね」

いつもの帰り道。
私がそんな事を言うと、隣を歩く景がくすっと笑った。

「クリスマスのイルミネーション見ながら、しめ縄の話するのは沙羅ぐらいだな」
「なによ?色気がないとでも言いたいの?」

私が軽く景を睨めば、景はしれっと答えた。

「沙羅にそんなもの求めてない」
「そんなものって・・・・」

はぁっと小さくため息を零して、薄く暗くなった夜空を見上げた。

(東吾。あなたがプロにまるまであとどれ位ある?それまでに私、いい女になれるかな?)

今日も私は心の中で語り掛けていた。


「じゃ、景。また明日ね」

私は自分の家の前で景にそう言って、家に入ろうとした。
その時、景が私を呼んだ。

「沙羅」
「ん?」
「メリークリスマス」

微笑んでそう言うと、景はさっと帰っていった。
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