初恋
「あ・・・めりーくりすます」

思いも寄らなかった景の言葉にやっと片言の言葉で返したけど、すでに景の姿は無かった。

(やっぱり私は生粋の日本人だわ・・・。こういうの慣れない・・・・)

ぽりぽりと頭を掻きながら、家の中に入ると出勤前の母が私に言った。

「沙羅、あなたにクリスマスカード届いてるわよ」
「クリスマスカード?」

そんな洒落たものを送ってくるなんて誰だろう・・・。
由香は絶対そんな事しないし、麻衣かな?

そんな事を思いながら、テーブルの上に置かれていたカードを見た。
宛先の面にアルファベットが並んでるのを見た瞬間、私の胸がドクンと高鳴った。

(東吾だ!)

ばっとカードを手にとって、ダッシュで自分の部屋に駆け込んだ。
差出人のところを見れば、それは確かに東吾からだった。

(私の事、忘れた訳じゃなかったんだ・・・・)

宛先面に並ぶアルファベットを見ているだけで、じんわりと涙が浮かんできた。
涙で見えなくならないうちに、と裏返した。
そこには、かわいいクマがクリスマスツリーに寄り添っているイラスト。
そしてサインペンで書かれた文字。

『   Merry Christmas!  Sara  』

たったそれだけのメッセージを私はそっと指でなぞりながら呟いた。

「メリークリスマス 東吾」


クリスマスなんて、私には関係ない。
そう思っていた。

だけど、東吾からの一言で
私にとって
クリスマスが特別な日になった。


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