初恋
次の日のお昼過ぎ。

約束どおり、景と一緒に駅前に向かっていた。
簡単に新年のあいさつを交わし、歩きながら会話していた。

「しかし、元旦にみんなで集まるって普通しないだろ」
「そうよね。誰が言い出したか知らないけど。まぁ、久々にみんなに会えるのは楽しみだけどね。景は誰かと連絡とってた?」
「テニス部の連中とはたまに電話で話したりしてるな。あと、田宮とは何度か手紙のやりとりはしている」
「えっ?」

景の言葉に私は足を止めた。
そして、景の身体をこちらに向けて次々に質問した。

「景、東吾と連絡とってるの?元気にしてた?テニス、頑張ってるって?」

必死に聞き出そうとする私の頭を景はぽんぽんとあやした。

「落ち着けよ。あいつは元気だよ。沙羅、田宮に手紙書いたりしてないのか?」

景の問いかけに私は俯き、首を横に振った。

「一度だけ返事を書いた。でも、それからは書いてない」
「どうして?あいつもお前からの手紙、欲しがってると思うが?」

景の言葉に私はぼそっと答えた。

「何度も書こうと思った。でも、いざ書こうとすると弱音を吐きそうになる。会いたいとか・・・淋しいとか。でも、頑張ってる東吾にそんな弱音吐きたくなくて・・・」

そう答えた私に景はふっと笑って、今度は頭をくしゃっと撫でた。

「意地っ張り」
「・・・どうせ私は可愛くないですよ・・・」

景の一言に拗ねて見せると、景は楽しそうに笑いながら言った。

「まぁ、そこが沙羅のいいところなんだけどな」
「可愛くないところが?!」
「違うよ」

少し乱暴に頭をくしゃくしゃとかき回すと、景は私を促した。

「ほら、時間に遅れる。早く行くぞ」

そうして再び私たちは歩き出した。

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