初恋
段々と事故の状況が明らかになってくると、それに比例する様に確認される犠牲者の数も増えていく。
生存者の名前も3日も経てば出てこなくなっていた。
次第に私の心にも言いようの無い絶望感が広がっていった。
それでも・・・と心を強く保って私は東吾の無事を祈り続けた。

だけど現実は、行方不明者リストにあった名前が次々と犠牲者リストへと書き換えられていく。
書き換えられる名前の中に東吾の名前が無い事を確認してほっと胸を撫で下ろす。
そんな日々を続けているうちに、どんどん心が擦り減っていくのを感じていた。


そんな私に最後通告がきた。

事故から1ヶ月が経とうとしていた。
私はいつもの様に学校が終わると真っ直ぐに家に帰り、テレビにかじりついていた。
部活はずっと休ませてもらっていた。
こんな状況でまともに選手のマネージメントなど出来ず、かえってみんなに迷惑をかけると思ったからだ。

もたらされる情報は圧倒的に少なくなり、ニュース番組でも事故以外の報道が多くなっていた。
イライラとテレビを見ていた私の耳にやっと事故のニュースが流れてきた。


『次はアラスカ沖で起きた飛行機事故のニュースです。
事故から1ヶ月を迎え、今日で行方不明者の捜索を打ち切る事が発表されました』



「え・・・・・待ってよ・・・・東吾は?・・・東吾はどうなるのよ?!」

私は思わずテレビに向かって叫んだ。

「見つけてよ!東吾を見つけて!!」


私は力なくがくっと膝をついて項垂れた。

本当は分かっていた。
この寒い冬の海に投げ出され、1ヶ月も生きている事など不可能だと・・・。
だけど、捜索が行われているうちは「もしかしたら・・・」と淡い期待があった。
そんな一縷の望みも絶たれてしまった。

「じゃあ東吾は・・・・ずっと・・・・冷たい海を漂い続けるの?」

そう呟いた時、なにかがプツンと切れた気がした。

「見つけなきゃ・・・東吾を見つけなきゃ・・・・」

うわ言の様に呟きながら、私は家を出た。

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