・*不器用な2人*・(2)
昼寝時間
1限目が始まる時間になっても、私は教室へ行く気にはなれなかった。
かと言って保健室へ入る気にもなれず、旧校舎の踊り場でジッと不貞腐れていた。
そんな時だった。
「何してるの、綾瀬」
頭上からガラッと掠れた声が降って来た。
一瞬誰だか分からなくて、慌てて身構えしながら顔を上げる。
マスクを顎まで下した淳君と、丁度目が合った。
「授業、どうしたの」
立ち入り禁止区域なのだからほかに誰かいる訳でもないのに、私はつい潜めた声で訊ねてしまった。
淳君は相変わらず仏頂面のまま私の正面に腰を下ろし、「綾瀬こそ」と呟く。
「私は、クラスメートの顔が見たくなかったから」
素直にそう言えてしまったのは、3年間ずっと同じクラスだった淳君相手だからこそだと思う。
相変わらずだねと小さく笑い、淳君はマスクをポケットへと入れた。
「声、思いのほか枯れちゃったね」
私が言うと、淳君は小さく肩を竦めた。
1限目開始のチャイムが鳴ると、少しだけ廊下にまでざわめきが聞こえてきたけれど、またすぐに静まり返った。
「綾瀬が授業サボるの、今年初だね」
そう言いながら淳君はポケットにしまってあったMPを取り出した淳君は、片耳にイヤホンを引っ掛ける。
もう片方のイヤホンを私へと無言で差しだし、彼はMPのタッチパネル部分を素早く操作した。
私がイヤホンを耳へと掛けると、いきなり爆音が大音量で流れこんで来た。
「あ、間違えた」
声にならない声を上げる私をチラッと見て、淳君は真顔のまま呟いた。
「こんなのいつも聴いてるの!?」
耳からイヤホンを外して訊ねると、淳君は「うん」と頷く。
「耳障りな曲しか入ってない」
彼は小声でそう言うと、私からイヤホンを取り上げて両耳を爆音で塞いだ。
それでもなお私の声が聞こえているのか、会話は普通に成り立っていた。
かと言って保健室へ入る気にもなれず、旧校舎の踊り場でジッと不貞腐れていた。
そんな時だった。
「何してるの、綾瀬」
頭上からガラッと掠れた声が降って来た。
一瞬誰だか分からなくて、慌てて身構えしながら顔を上げる。
マスクを顎まで下した淳君と、丁度目が合った。
「授業、どうしたの」
立ち入り禁止区域なのだからほかに誰かいる訳でもないのに、私はつい潜めた声で訊ねてしまった。
淳君は相変わらず仏頂面のまま私の正面に腰を下ろし、「綾瀬こそ」と呟く。
「私は、クラスメートの顔が見たくなかったから」
素直にそう言えてしまったのは、3年間ずっと同じクラスだった淳君相手だからこそだと思う。
相変わらずだねと小さく笑い、淳君はマスクをポケットへと入れた。
「声、思いのほか枯れちゃったね」
私が言うと、淳君は小さく肩を竦めた。
1限目開始のチャイムが鳴ると、少しだけ廊下にまでざわめきが聞こえてきたけれど、またすぐに静まり返った。
「綾瀬が授業サボるの、今年初だね」
そう言いながら淳君はポケットにしまってあったMPを取り出した淳君は、片耳にイヤホンを引っ掛ける。
もう片方のイヤホンを私へと無言で差しだし、彼はMPのタッチパネル部分を素早く操作した。
私がイヤホンを耳へと掛けると、いきなり爆音が大音量で流れこんで来た。
「あ、間違えた」
声にならない声を上げる私をチラッと見て、淳君は真顔のまま呟いた。
「こんなのいつも聴いてるの!?」
耳からイヤホンを外して訊ねると、淳君は「うん」と頷く。
「耳障りな曲しか入ってない」
彼は小声でそう言うと、私からイヤホンを取り上げて両耳を爆音で塞いだ。
それでもなお私の声が聞こえているのか、会話は普通に成り立っていた。